乱択ショートショート #03
こんにちは。
三日坊主なので今日で終了予定です。
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ショートショート『吸血鬼』
晩餐会はつつがなく進んでいた。
私はいつも通りに、窓越しに彼の姿を見つめている。
彼──私の主人は吸血鬼だ。
私たちは彼のおかげで今を生きることができているが、それもいずれきたる収穫のため。その時になれば私も私の全てを彼に捧げることになるのだろう。
私の隣人はそんなのはまっぴらだと云うが、実のところ私はそれを受け入れている。ただ、これまで受けた恩を返すだけだ。
彼はグラスに真っ赤な血を注ぐ。私はそれを見ている。
彼はその香りを楽しむ。私はそれを見ている。
彼は液体を口に含む。私はそれを見ている。
見ていられなくなったのだろうか。隣の果実が地面に落ちて、べちゃりと潰れた。
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乱択ショートショート #02
こんにちは。
三日坊主なので今日で折り返し予定です。
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ショートショート『片思い』
街外れの神社の裏。木漏れ日の差すあぜ道を抜けたところにある小さな鳥居が目的地だった。
そこに二人組で訪れると、片方は天狗だかなんだかに連れて行かれるらしい。
馬鹿らしいと思いながらも現場を訪れた僕は早くも後悔していた。黒ずんだ木の鳥居はたしかに雰囲気があるけれど、それだけだ。耳をすませても風の音や鳥の鳴き声が聞こえるばかりで何かが近づいてくるような兆しはない。
ただでさえ胡散臭い噂をもとに、ましてやひとりでやってきたのだ。長鼻の妖怪はお一人様には手が出せないようだし無駄足だったみたいだ。
面白いこともなさそうだし、もう帰ろうかな。
最後にここにきて撮ってみた写真を見返してみる。
林。山道。ヒヨドリ。そして──
「うえ」
そのうちの一つに、思わず変な声が出てしまった。
「なにが神隠しだよ。心霊スポットじゃないか」
小さな鳥居の左横で仏頂面をした僕を捉えた写真だ。けれどその右半分は半透明な何かがいるように不鮮明だった。よくよくみれば顔があるようにも見えるし、不気味でしかたない。
最悪の気分だ。本当にくるんじゃなかった。
だいたい、どうしてこんなところに来てしまったんだ? そもそも僕は神隠しなんかに興味なんてないのに。
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乱択ショートショート #01
こんにちは。
夏休みで少し時間に余裕ができたのとTLに物書きの機運を見かけたのとで、ショートショートをやってみることにしました。
自分でテーマを決めようとすると時間がかかるので単語を放出してくれるサービスを使います。語彙レベル3、表示語数2でイクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)
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ショートショート『報復』
『XX、ここに眠る』
もともと刻まれていたはずの名前は削りとられてもはや読むことができない。その人物の名が残ることすら許さないという偏執的な想いが伝わってくるようだった。
それだけではない。
墓標やその周りには、口に出すのもはばかられるような下品な言葉がスプレーで落書きされている。
人でなし、許さない、といった恨み言もあちこちから目に入ってくる。
その人物の過去の失敗を揶揄するような書き込みのなされたチラシも辺りに散らばっている。
幾人にも踏みつけられたのだろうそれを手に取ると、その人物が中学生の時分に書いたラブレターだの、高校時代に学園祭でやらかしたエピソードだの、内容もかなり充実している。
よくもこれだけ調べたものだな。半分感心しながらそのチラシを投げ捨てて踵を返した。
こんなことなら、くるんじゃなかった。
愚痴を呟きながら、ここまで自分を連れてきてくれたタイムマシンに乗り込む。
死後の自分の評判を見れば、将来の自分がどんな人間だったか分かる。そんな謳い文句のキャンペーンを聞いて、面白そうだと乗ってしまったのが全ての間違いだったのだ。
未来の自分は人のためになることをしているのだろうか、幸せに暮らしているのだろうか、そんなことを想像しながら楽しみにしていたというのに。
現実はどうだ。この有様だ。
墓場は罵詈雑言の嵐。この荒れようもひとりふたりでできるようなものじゃない。どうやら未来の自分は相当の人間に厭われていたらしい。一体何をしたというのだ。
将来の自分が何者であったにしろ。死後の人間にこんなことをするなど、心というものがないのか。
「やろう、ぶっころしてやる」
帰ったらこんなことをしでかす者たち全員に復讐してやる。なんと蔑まれようが構うものか。誓いを胸に、帰還のスイッチを押した。
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【遅刻】(Advent Calendar12/21記事)
遅刻します。すまん!w